私は今、ドイツで1歳の娘を保育園に預けながら生活している。
先週、娘がはじめて保育園でお昼寝をした。
それだけのことなのに、なんだかじんときた。
10分から始まって2ヶ月。
ドイツの慣らし保育は、とにかく長い。
この記事では、ドイツの慣らし保育は日本とどう違うのか、実際の体験として記録しておきたい。
親子1時間からスタートする世界
最初の日は、親子で1時間一緒に過ごすところから始まる。
歳の近い子が2人、先生が2人、そして娘と私。
こじんまりしたお部屋で、母も一緒になって積み木を積んだり、子どもたちが拾ってきたのであろう栗をどうぞ、したりする。
最初の数日は、娘よりも母のほうが緊張していたかもしれない。
でも、他の子どもにも絡まれたりして、なんだか幸せになり、緊張もほぐれる。
わが子は案外、他の子や見知らぬおもちゃに興味を示している。
そして、1歳年上のお姉さんを真似してみたり、
他の子の髪の毛を触りたがったりする。
なんだ、まだ1歳だけど、けっこう周りの環境に興味を持ってるんじゃん!
「10分の分離」が始まる
そこから数日後、少しずつ“分離”が始まる。
まずは一緒に過ごした後、最後の10分だけ。
母は待機室に移動して、ドア越しのギャン泣きを聞きながら時間が経つのをただ待つ。
うわー、泣いてる泣いてる。
そわそわしながら、Duolingoでさえ集中できない。
10分ぴったり経ったら、迎えに行く。
ちゃんと抱っこして、「じゃあね」と目を見てバイバイして、先生に「お願いします」とパスして、退室する。
こっそり抜け出すのかと思っていたので、このきちんとしたお別れ方式に最初はすこし驚いた。
でも、先生に教えてもらって納得した。
「こうやって繰り返すことで、”必ずママが迎えに来てくれる”ということを学んでいくんです」
なるほど、と思った。
それを聞いてから、「かわいそうかな」と思っていた気持ちが少し変わった。
ママと娘の信頼の練習なんだね。
わが娘よ、がんばれ。母もがんばる。
そうして数日をかけて、10分、15分、30分…と、
2週間後くらいには、気づけば1時間、過ごせるようになっていた。
リセットされる現実(Abgewöhnungszeit問題)
ところが。
ようやく1時間ほど預けられるようになってきた頃、夫と私が風邪を引いた。
そこに祝日も重なり、気づけばほぼ1週間以上、保育園に行けない日が続く。
元気なのは、娘だけ。
撃沈する夫と私をよそに、元気に遊びまわるわが子。
せっかく慣れてきたのに、またゼロに近い状態に戻るような。
「これじゃあAbgewöhnungszeit(習慣断ち)だね!」
と笑って言う夫。
ほんまにそれ。
慣れた、と思ったら離れる、の繰り返し。
この時点で、すでに1ヶ月ほど経過していた。
ネットの情報では、だいたい早い子だと4週間くらいで完了すると書かれていた。
私は思った。
これ、いつ仕事始められるん。
Vollzeit(フルタイム)のお仕事が、どんどん遠のいていく気がする。
焦りと、でもどうしようもない感覚と、その間で揺れる感じ。
ドイツの慣らし保育は「子どものペースに合わせる」のが大前提らしく、急かすことはもちろんできない。
わかってはいるけど、なかなかしんどい。
履歴書だけは、作り込まれていく。
「よく食べる子」は強かった
気を取り直して、また保育園通いを再開する。
すこしずつ時間を延ばして、朝ごはんの時間まで過ごせるようになってきた。
ここは、まったく問題なかった。
うちの子は、もりもり食べる。
迎えに行くたびに、先生から「今日もたくさん食べましたよ」と報告される。
“Sie hat super gegessen!”
それを聞くたびに、なんだか誇らしくなる。
生まれたときから、よく飲む子なんですよ、と、自慢してみたくなったりする。
この子の「食べる力」は、ちゃんとここでも発揮されているらしい。
帰宅して、夫にちょっと自慢してみたりする。
「うちの子、今日、パンを5つも食べたんだって!」
…でもまって、ごはん代、2倍請求されたりしないよね?
そうならないことを、私は祈る。
手足口病、そして再び中断
そこからもう少し時間が延びて、お昼ごはんまで過ごせるようになってきた。
ここまでで1か月半。順調だった。
ところがまたしても。
手足口病(Hand-Fuß-Mund-Krankheit)にかかってしまう。
娘、人生初の病気への罹患。
熱は全然出なかったけど、口の中が痛いのか、ひたすら不機嫌。
保育園からも「不機嫌なので迎えに来てください」と連絡が来て、また中断。
回復するまで4日ほどかかった。
ついにお昼寝へ
そして、ようやく。
また保育園が再開して、お昼ごはんを食べて帰ってくるようになった。
2回目のお昼ごはんチャレンジ。
ちょうど迎えに行くタイミングがごはんタイムと少し重なり、
じゃがいもをほおばるわが子を観察する。
2歳さんより食べてる。
そして、おかわりしてる。
誰よりも最後まで食べて続けている。
食への執着が感じられた。
最近、お腹が丸すぎるのには原因があるようだ。
その翌日のこと。
ここから先は、少し空気が変わった。
朝、先生からこんな声かけがあった。
「今日、お昼寝まで挑戦してみようと思うんだけど、もし難しそうだったらまた電話するね」
ドキドキしながら待っていたら、かかってきた電話は「難しそう」ではなかった。
「お昼寝できたよ!」
寝入るまで少し時間はかかったけれど、泣かずにそのまま眠れたらしい。
起きたらまた連絡するね、と先生は言った。
思わず、「Super! Klasse!」と連呼しながら電話を切る。
お昼寝なしで進む1日
生まれてから今日まで、ずっと娘のお昼寝に付き合ってきた。
抱っこしながら、添い寝しながら、背中スイッチに怯えながら。
抱っこどころか、お腹の上にのせて、動けないように固定して、寝かしつけていたら私も何度もそのまま寝てしまった。
それが今日、初めて、娘のお昼寝なしに1日が進んでいる。
ちょっと寂しい。
でも、それ以上にすごい。
わが子がちゃんと一歩ずつ、外の世界を信頼できるようになっている。
2ヶ月という時間の意味
2ヶ月、長かったな。
たった2ヶ月、と思うかもしれないけど、毎日が少しずつ積み重なる2ヶ月は、
思ったよりずっと長い。
でも、この長さにはちゃんと意味があったんだと思う。
娘は今日も、保育園で誰かのことを信頼することを学んでいる。
…それでもわたしは思う。
やっぱり、いつから仕事、始められるん。
ここまでで、ようやく5時間。
フルタイムで働いてるママたち、そしてその子どもたち、どっちもすごすぎ。
祖父母の協力なく、共働きをしている方の生活はいったいどうなっているんですか。
慣らし保育が完了したと言えるまでは、まだまだ時間がかかりそうです。
手足口病にかかった娘を病院に連れて行ったときに悶々と考えた、ドイツ語動詞「lassen」に関する脳内記録もあります。
良かったら覗いていってください。
ドイツ移住直後、健診や離乳食など、生後5~6ヶ月の記録はこちら。


